僕はたまに近所の小学生と遊ぶことがあるのですが、この間は
「グリコやりたい!」
と提案されたので階段を使って君の名はみたいな構図でじゃんけんをしていました。
グリコとは、
グーで勝てば「グリコ」
パーで勝てば「パイナップル」
チョキで勝てば「チョコレイト」
の各文字数分だけ階段を登ることができ、先に頂上に着いた方が勝ちという、ゲーム名になるにはいささか「グリコ」の戦闘力が弱めのゲームです。
しかしその日に限って僕はやたらじゃんけんが弱く負けそうになったため、たまたまグーで勝てた際に
「こういうのもあるんだよ」
と言いながら「グリコ」を「グレープフルーツ」と置き換えて形成逆転の勝利を収めました。
小学生と言えども勝ちは譲りません。
芭蕉です。
さて、こんな極悪非道な僕ですが、今日は注文した覚えもないのに2つもAmazonから荷物が届きました。
聡明なフォロワーの皆様でしたら理由はもうお分かりでしょう。
そうです。
衝撃でしたね。
このご時世ですが僕はインターネットでの出来事がリアルに反映されるといまだに驚くタイプなので、「芭蕉」宛に荷物が届いた時は聞いたことないような悲鳴をあげて玄関で腰を抜かしてひっくり返ってしまいました。
まあ普通に嘘なんですけど
いつも通りハンコを押して(思えばハンコと宛先の名前が違ったけどいいのかな)、何が入ってるのかわからないパンドラ状態の荷物を開封します。
ドキドキしますね。
純金の腕時計とか届いてたら増税前に急いで売り払ってマンションとか買っちゃうな〜〜
まずはこれからです。
この形ですから薄いものでしょう。
まじかよ
ほんまに届いたで……
しかも
そこそこ厚い。
お手紙的なのが入ってました。
確かに実用性は一番高そうだけど!!!
けど……20歳でカクテル完全バイブル持ってる人、います?
20歳とかまだギリギリ「バイブル」という字面でニヤニヤできる年頃ですからね。
しかもカクテル。カクテルて。
後に引けなくなりましたね。
しかも結構丁寧に描いてある……
あれですね。
お酒の攻略本的な。
なんか最後の画像の一覧とか、ポケモンのアイテム入手場所一覧的なので見た覚えありますもん。
これを読み終わる頃には、僕はあの日の日記を書いた僕を鼻で笑えるほどカクテル作りに詳しくなっていることでしょう。
楽しみですね。
次はこっちを空けてみましょう。
持った感じ軽いので、おそらくカクテル道具キットとかでしょうかね。
おや。
かわいらしい袋に入っています。
カクテル道具キットだけでなく、アクセサリーの可能性も浮上してきました。
僕が入れてないものをわざわざ追加して送ってくれるなんて、粋な方がいらっしゃるものです。
お手紙に英語で一言加える人は紳士だって実家の猫も言ってました。
早速袋も開けてみましょう。
……ん?
……賞味期限?
……ブラック?
ブラックって、何のことでしょう。
さっきポケモンの話ししましたからね。
ポケモンのシリーズのことでしょうか。
でもなんか、あれの匂いしますね。
…………
いや粘土!!!!!
…………
粘土!!!!!!
粘土!!?!?
粘土〜〜〜〜!!!
硬てぇ〜〜〜〜〜〜!!!!
粘土だったよ。粘土?
お母さん、お元気ですか。
僕は上京して一年と半年が経ちましたが、不慣れだった一人暮らしもやっと慣れてきて、今ではネットの友達から食用粘土が送られてくるようになりました。
どひゃ〜〜〜〜
マジで粘土じゃん。
粘土つっうか……岩じゃん。
すごく硬いんです。
「雨上がりの湿ったアスファルトの香りがします」。
というかもう袋開ける前から雨の匂いしてましたからね。今朝は晴れてたんで確実にこいつからにおってました。
食べられるタイプの匂いではない。確実に……
しかしこれは食べ物として人からいただいたもの。
食べましょう。
怖いからとりあえずこのサイズからでいい?
(かなり頑張って削り取った)
触感的には黒雲母に近いですね。
そうになってて、パラパラめくれる感じの構造になってます。
黒鉛的な香りがします。
これ本当に食レポの文章か?
「噛んだとき少しべたつきます。それは活性炭の味と湿った粉塵の心地良い味を持っています。黒い粘土は完全にかみ砕かれ、口の中で溶け、わずかにしわになります」。
そのままでした。
美味しそうに紹介する気、ある?
ありませんよ
だって口に入れた途端「砂」でしたからね。
みなさんは子供の頃、砂場の砂が間違って口に入ったりしたことありませんか。
僕はよくあったのですが、果てしない異物感に襲われてすぐに吐き出していました。
あの感覚を20歳になって味わうなんて(味わってるので)……
ここ笑うところですよ。
しかしこのサイズをちまちま食べていては仕方ありません。
思いきって囓り取りましょう。
ぐぎぎぎぎぎぎぎぎぎ
砂食ってるよ今…………
とてつもなく硬いのですが、驚くことに口に入れるとほろっと砕けて砂状になります。
それが口の中の歯や粘膜にベタベタと張り付いて、僕に田舎の光景を思い出させてくれます。
雨上がりのアスファルト、水を引いたばかりの田んぼ、自転車で走る夕方の河原……
脳みそはの中は非常にノスタルジックですが、その真下の口の中では非常に暴力的な何かが僕に襲いかかってきています。
噛むたびにジャリジャリという食べ物ではない音。
飲み込むたびに全身に走る"土"。
何……何?
何でしょうこれ。
粘土か。
粘土って食べられるんだ〜
というよりは「食べちゃいけないものを食べている」という感覚の方が激しいですが、おそらく体にはとてつもない効能があるのだと信じて飲み込みました。
もう一口目でかなり感覚が麻痺してるのでこのまま一気に行ってしまいたかったのですが、残念ながら僕はこれから大学でもう一コマ授業があります。
名残惜しいですが粘土を完食するのはまた今度の機会にしましょう……
(意訳:たすかった)
と、フォロワーの手により間違いなく新しい扉を開いてしまった僕ですが、こんな書き方をしていますが普通にかなり嬉しいです。
人から何かをもらえるってそれだけで幸せですからね。
僕は友達から誕生日プレゼントをもらった事とかほとんどなかったし。
めちゃくちゃ嬉しいんですけど、粘土。
カクテルバイブルはシンプルに助かるんですけどね、粘土。
粘土。
粘土。
粘土。
粘土。
粘土。
口の中が、粘土。
粘土。
粘土。
粘土…………